☆ 誰かと

 

 

 人間には生命を維持しようとする働きが備わっています。生命力、自己回復力、免疫力。

 

 身体のバランスを保とうとする働きが働きやすいように整える。薬も医術も療術療法も様々な方法で生きようとする力を引き出し働けるように状況を整えるための行いです。

 

 誰にでも備わっているこの生命の働きを思い起こし、身体の変調を恐れ不安になって外に救いを求めるだけでなく、まずできることをやってみましょう。生命の働きへの信頼は大きな安心をもたらし、身心の持てる力を十全に発揮させてくれます。

 

 

 

 << 背骨を撫でる  >>

 

 背骨の中には神経の太い束があってそこから体中に張り巡らされた神経網を通して、体中の情報を集めたり伝えたりしています。背骨は小さな椎骨が並んで繋がっています。

 

一つ一つの椎骨はそれぞれ繋がっている体の部分からの情報を表現してくれていますから、違和感のある椎骨から体の異常感のある処への働き掛けもできます。それぞれの椎骨が独立していて弾力があると働きやすいのですが、くっついていたり、埋もれていたり、とびだしたり歪んでいると働きが鈍くなります。体勢を変えたり、動かしたりしても変わりますが、呼吸が深くなると安定します。呼吸を通して働きかけることもできます。

 

 

 

床でも椅子でも座っている人の背中に向かって手をあてます。

 

〇両手のひらを横に重ねて首の付け根から腰まで背中の真ん中をゆっくり撫で下ろす。

 

 

 

〇両手の指先を重ねて背骨の上を撫で下ろし「背骨の上でいいですか?」と確認する。

 

 

 

〇背骨の左右両脇に背骨をはさむように手の指を3本並べて、少し圧をかけながらゆっくり骨盤の上端まで撫で下ろす。

 

 

 

〇次に同じように3本の指を置いたら今度は1本ずつ撫で下ろす。最初は中指だけを押し付けて撫で下ろし、次は薬指。最後の人差し指は背骨の脇。

 

 

 

〇それぞれ感触が違うのでどの指で撫で下ろされた感じが良かったか聞いて、良かったところをもう一度丁寧に撫で下ろす。違いがわからない人は感覚が鈍っているので、もう一度同じように繰り返し、選んでもらう。

 

 

 

〇それからもう一度背骨を撫でる。今度は背骨の状態を感じながら撫でて、違和感のある部分をさがす。相手にも聞いてみる。触られている方の感じる部分も大事。くっついていたり、歪んでいたり、気になる処に片方の手をあてたら、もひとつの手は似た感じの処か、凹んでいたら凸だした処のように対になる感じの処にあてて気を通す。

 

〇始めはまず自分の呼吸を整えるために脊椎行気。自分の背骨から腰まで吸い込むつもりで息を吸って下腹に落とし、あてている手のひらからゆっくり吐くつもりで呼吸を続ける。

 

落ち着いてきたら相手の代わりに、相手の背骨から息を吸って手のひらから息を吐くつもりで呼吸を続けます。手が自然に離れたら充分ですが、10~12呼吸位で息を吐きながら手を離します。

 

 

 

〇もう一度背骨を観察します。手をあてた処が変わったか確かめて、別の処を探すか、まだ違和感があれば別の処と合わせて同じように気を通します。今度は自分の体勢は整っているので相手の代わりに手のあたっている処で呼吸するつもりで気を集めていますが、反応が鈍かったら自分の下腹から手のひらを通して息を吐くつもりで応援することもできます。 はじめは現在のつかえ、次にそのもとになっているつかえが出てくるので2回は繰り返した方がいいです。手は磁石のようになっているので、自然に手が移動したらそのまま続けます。相手の体の要求ですから。

 

 

 

〇最後にもう一度背骨をさわってみます。一つ一つの椎骨が独立し弾力が出てきていれば呼吸が深くなっています。相手の方の体が働きやすくなり生命力、免疫力が発揮しやすくなります。手をあてる側も集中することで気持ちが落ち着き呼吸が深くなります。体が強張ったり息が詰まった感じが残る場合は念が強過ぎますから、天心無心、深い呼吸で観察を心掛けましょう。