~ 手 を あ て る ~

 

 誰にでも体を健康に保とうとする生命の働きが備わっています。体の具合が悪い時には無意識に手を当てています。お腹が痛い時、頭が痛い時、歯が痛い時、本能的に手を当てる。手当はそこに体の氣を集め自然治癒力を高める働きがあります。手を当てたところに呼吸を合わせてさらに氣を集注する方法を愉氣(ゆき)と呼んでいます。何となく子どもの様子が気になる時、頭をぶつけた時などにはやってみて下さい。

 

余分な緊張を抜いたやさしい手で呼吸にのせて手のひらからゆっくり息を吐いてゆきます。手のひらから息を吐くつもりでいいので、ゆったりと深呼吸を続けていると手のひらが温かくなってきます。そうしたらこんどは手のひらで呼吸するようなつもりで、手のひらから息を吸って、手のひらから息を吐いています。

何となく汗ばんだ感じになってふっと手が離れたら充分ですし、気がそれたらそれで充分です。冷たかったところや緊張して強張っていたところ、凸凹していたところがふつうのいつもの状態に戻れば体の力が発揮できます。

手が慣れてくると体の異常感や背骨のこわばりが感じやすくなり磁石に吸いつけられるように自然に手がゆくようになりますから、無意識に手がゆくところに愉氣をしてみて下さい。

普段からお腹をなでたり、背骨をなでたりしているといつもと違う感じに敏感になってゆきます。何となくでいいのです。何となく違和感を感じるところに手を当てて氣を集めていくことを繰り返していると自然に手の感覚が引き出されて高まって行きます。

自然に備わっている本能的な働きを活用して生命力を高めましょう。

 

 

〇お臍と後頭部   <生きる力の基本>

 おなかに手をあててゆっくり撫でながらお腹の様子を観察します。呼吸がしっかりしていれば大丈夫。冷たい処があったらしっかり愉気して下さい。頭を打ったりしていることがあるので頭もみて、違和感のある処と合わせて手をあてます。

お臍は栄養を吸収する働きにとってとても大事なところです。お腹がぺしょんとしていたり、栄養の吸収が落ちている時はお臍に愉氣をします。お臍に手を当てて温かく氣が集まってきたら、温かさを感じながら当てている手を少しずつ浮かせていきます。何となくお腹全体がふわっとまあるく感じられたら充分です。

 

後頭部は体が生命を保っていくための自律的な働きと深く関係しています。手のひらにすっぽりおさまって呼吸が深ければ心配ありません。

頭が凸凹していたり冷たく感じるところがあったら愉氣しましょう。乳児なら授乳をしながら後頭部に愉氣するとお乳を吸う力が高まります。

膝にのせて片手を後頭部、片手をお臍に当てて両方の手のひらから呼吸をするようなつもりで愉氣していると赤ちゃんが充実してまとまった感じになってきます。

その時の重さを覚えておいてください。変に軽い時は要注意です。頭をぶつけたり、高いところから落ちたり、急激な変動を起こしている時は妙に軽い感じになります。

すっぽり包み込むように愉氣していると変動がはっきりしてきます。冷たいところが出てきたらそこに、熱が出てきたら後頭部に、もどしたら肝臓(右の肋骨の下あたり)に、気になるところに愉氣してあげて下さい。体がずっしりとまとまって呼吸が深くなれば大丈夫です。汗ばんだらよく拭ってあげてください。

 

幼児になると動きも激しくなり、頭の打撲も多くなります。頭の打撲の場合、ぶつけたところと衝撃が抜けたところに手を当てて両方の手を向かい合わせるように氣を通します。

時間がたった打撲の場合は打ったところに手を当てて、もう一方の手でお腹をゆっくりなでます。何となくつながっているように感じるところや冷たく感じるところで手を止めて、頭に当てている手と合わせるようなつもりで手のひらの間でゆっくり呼吸していきます。呼吸が深くなって手のひらが何となく汗ばんできたり、ふっと手が離れたら充分です。

 

 頭の打撲の場合、こぶが出てくれば心配ありません。こぶが消えるまで時々愉氣してあげてください。強い打撲でこぶが出ないときの方が注意が必要です。こぶが出るまで愉氣するか、3日間は入浴をひかえて(強い刺激を控えて)様子をみながら愉氣を続けます。

 

よく頭をぶつける場合、気が上がって頭の緊張が続いていることがあります。足が冷たかったりアキレス腱が硬かったりお尻や肩が硬くなっていたら、足をふったりあたためたり、足で遊んであげましょう。気が下りてきます。

 

 

〇頭や神経の緊張が弛みにくい時

 頭の上、耳と耳を結んだ線と左右の黒目を引き上げてきた線の交点『鬼の角の生える処』といわれている、指を置くとずーんと響く感じのするところが≪頭部第二調律点≫という神経系統の調整の急処で左右にあります。

子どもの場合は片方の手のひらを左右2点をつつむように頭にのせて、氣を下ろすようなつもりで手のひらから息を吐いていけばいいですし、頭をなでてそのままふうっと氣を下ろしてもいいです。かなり緊張が強い場合は膝に腰掛けさせて大人と同じようにやります。

大人の場合は手のひらの付け根のあたり(腕頭骨)で左右のこめかみをはさみ、軽く上に引き上げながら腰まで伸ばして、人差し指か中指を調律点に当てます。指がふっとおさまればそのまま愉氣の要領で指先から気を通していきます。

緊張が強いと尖っていたり、指のおさまる窪みがなかったりするのでずーんとするところをさがします。かなりずれていることもありますが指のひっかかるところに当てて氣を通しているうちに揃ってきます。指が穴に吸い込まれるような感じなってきて、そのうちに左右の感じがそろってきたら最後に軽く左右を合わせて指を離します。

 

目が疲れた時、歯が痛い時、頭が痛い時、不安をおさめる時にも効果があります。先ほどの頭をよくぶつけるような時にもやってあげて下さい。

 

 

〇背骨をなでる

 背骨(脊椎)の中には体中に張り巡らされた神経のおおもとの太い束が集まっています。脊椎は小さな椎骨がつながっていて胸椎が12個、腰椎が5個ありそれぞれが担当する部分の状態や体の動きに伴って変化しています。

くたびれると下がり緊張すると上がり、興奮すると飛出したり衝撃を受けると陥没したり、左右斜めに偏ったり、日常的に動いて変化していますが、この動きが滞って閊えてしまうと生命力が発揮しづらくなります。

 体はいろいろなところで支え合い補い合って働いているので思いがけないところに影響が出ることがあります。とどこおってつかえているところは神経の伝達情報によって背骨に異常感があらわれます。気になるところ、不自然な感じがするところに愉氣していくと滞っているところ、閊えているところが働きを取り戻していきます。

背中をやさしくなでながら体中の情報が集まっている背骨に丁寧に氣を通してゆくだけで軽いつかえはほどけていきます。何回かゆっくり撫でてみて、同じところに手が止まったり、違和感を感じるところがあったらじっと愉氣してあげて下さい。

呼吸が深くなれば大丈夫です。

 

〇お腹の呼吸をみる

 大人にとっても子供にとってもお腹は大事なところです。感情のつかえや基本的な生命力の状態が現れます。やわらかくゆったりと呼吸が深ければ大丈夫です。冷たい処や硬い処があったら愉氣してあげて下さい。こころが落ち着いて安定していれば生命の力が発揮されます。

 

 

親がそばにいるだけで子どもは安心します。不安がっていたらスキンシップ、しっかり抱きしめて、撫でたり、話しかけたり、しっかり見つめてあげましょう。静かに呼吸を整えて愉気していると自分の気持ちも落ち着いてきますよ。